JA共済の自動車共済と自転車特約を比較・評価

JA共済 クルマスター
オススメ度:
1
保険会社:
JA共済
名称:
クルマスター
自転車特約:
日常生活賠償責任特約等
個人賠償:
2億円
示談交渉:
あり
特徴:
補償もサービスも安心・充実

JA共済の自動車共済「クルマスター」には自転車専用の特約が無いため、日常生活賠償責任特約・弁護士費用保障特約などを組み合わせて自転車事故に備える必要があります。また、JA共済は正組合員である農業従事者・農家向けですが、出資金(一口が1,000~10,000円)を支払えば准組合員として契約できます。

それでは以下で保障内容・掛金(保険料)・メリット・デメリット・評判等を解説し、他社の自動車保険の自転車向け特約と比較していきます。

補償内容・特約

JA共済のクルマスターで自転車事故に備えるには、まずは人身傷害保障が付いているか確認する必要があります。JA共済の人身傷害保障は契約したクルマに搭乗中のケガの他に、歩行中にクルマと接触した場合のケガや、自転車に乗っていてクルマに衝突された場合のケガも保障されます。共済金額は3000万~無制限まで設定でき、金額に不足感が無いかも確認する必要があるでしょう。

さらに人身傷害保険には傷害定額給付保障が任意で付けられます。人身傷害は実際の損害額を勘案した共済金額となりますが、傷害定額給付保障を付けると契約時に定めた金額が受け取れます。自分や家族が自転車に乗っていてクルマと事故になった場合、死亡すれば300万円、後遺障害なら障害の程度によって12~300万円、ケガの治療日数が1~4日なら1万円、治療日数が5日以上なら10万円の共済金が受け取れます。各金額が倍額になる倍額型も選択できます。

傷害定額給付保障の補償内容(出典:JA共済 自動車共済「クルマスター」商品パンフレット2022年4月版)

また、日常生活賠償責任特約を付けると自転車に乗っていて加害者となった場合に保障されます。自転車で他人にケガをさせたり物を壊して、相手から損害賠償されると2億円を限度に共済金が受け取れます。自転車事故だけではなく日常生活全般が補償の対象で、子供が投げた石で他人の家の窓ガラスを割ったりしても保障されます。

その他に弁護士費用保障特約を付けると、もらい事故などで保険会社が示談交渉できない場合に弁護士に依頼する料金が保障されます。例えば自転車に乗っていてクルマに後方から追突された場合などが考えられ、弁護士・司法書士への相談料・依頼料・訴訟費用として300万円まで共済金が受け取れます。

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掛金(保険料)を他社と比較

JA共済の自動車共済に自転車向け特約(日常生活賠償責任特約・弁護士費用保障特約)を付けると、30歳男性・6等級・アクアの人は掛金(保険料)が年間で約2500円の上昇となります。前者が約1200円で後者が約1300円のため、ほぼ半々となっています。前述した傷害定額給付保障を付けると掛金は約3500円ほど上昇するため、他の特約よりも上昇幅は大きめといえます。

次に掛金は他社より安いのか高いのか、下図で他社の自動車保険(+自転車特約)と一覧表で比較しました。自転車向け特約を付けることで上昇する金額で比較し、さらに自動車保険トータルの保険料でも比較しました。30歳男性(40歳男性)・6等級・アクア・走行距離9000km以下という条件で算出しました。

自動車保険に自転車特約を付けた時の保険料の比較一覧表(ソニー損保・アクサダイレクト・三井住友海上・三井ダイレクト・チューリッヒ保険・東京海上日動火災・東京海上ダイレクト・損保ジャパン・損保ダイレクト・楽天損保・SBI損保・共栄火災・JA共済・こくみん共済coop)※各社の公式HPを元に当社が独自に作成

この共済の特約分の掛金は他社と比べて安く、既に契約済みの人が特約を付けても大幅な負担増にはなりません。自転車向け特約を付けた自動車共済トータルの掛金でも他社よりも安めです。ただし、JA共済には他社の自動車保険のような自転車専用の特約がありません。JA共済には専用の特約が無い分だけ掛金が安いともいえます。一応、掛金ではメリットは無くはないようですが、掛金以外にメリットがあるのか続けて記述していきます。

メリット

JA共済にある自転車向けの特約の中では、まずは傷害定額給付保障がある点がメリットに挙げられます。人身傷害保険は治療費の他に休業による損害・精神的損害・逸失利益等が勘案されるため、実際の金額はケースバイケースです。この保障を付けると死亡・後遺障害は自分が設定した額が受け取れ、共済金の受け取りもスピーディーになる可能性が高いです。各保険金が2倍になる倍額型があり保障を一段と手厚くできるのも良いです。

また、日常生活賠償特約の限度額が2億円と高めなのもメリットです。他社には1億円を上限とする保険があり、自転車事故の9000万円台の高額賠償事例にギリギリです。今後の事例では1億円を越える可能性があり、それが自分となる可能性も否定できません。ある程度の上昇があっても2億円なら余裕があります。

日常生活賠償特約の補償内容(出典:JA共済連福島 自動車共済「クルマスター」リーフレット令和5年版)

ちなみにJA共済の准組合員になると、加入した地元のJAごとに特典があり野菜等の割引やポイントが貯まるサービスなどがあります。さらに全国8ヶ所にあるJA共済の宿泊保養施設で優待・割引があります。全国各地の旅館で温泉に浸かって地元食材が楽しめます。

JA共済の宿泊保養施設(出典:JA共済公式HP「のんびり宿泊保養施設」)

デメリット・弱点・落とし穴

JA共済で自転車向け特約を付けるデメリットとしては、まずは新規契約だと准組合員になり対面契約する手間がある点が挙げられます。准組合員になるには居住地のJAに行く必要があり、共済に加入するには対面での説明と書類の記入が必要となります。既に組合員なら共済に加入する手続きだけで済みますが、それでも億劫だと感じる人は少なくないでしょう。

保障面では人身傷害保険では自転車事故に備えるには不十分である点がデメリットです。人身傷害保険では自転車と自転車、自転車と歩行者、自転車の単独事故でケガをしても保障されません。他社の自動車保険には自転車専用の特約があり、これらの事故でケガをしても保障されます。

さらに弁護士費用保障特約は自動車事故に限定されている点も見逃せません。この特約でも自転車と自転車、自転車と歩行者の事故では利用できません。他社の弁護士特約は日常生活全般で利用でき、自転車事故以外に日常でのトラブル(他人の犬に噛まれた等)でも利用できます。他社では少なくとも弁護士特約を日常生活を含むトラブルまで保障に含めるかを選択できます。

弁護士費用保障特約の補償内容(出典:JA共済 自動車共済「ご契約のしおり・約款」令和7年1月版)

ちなみに本家の自転車保険なら自転車に乗っている時のケガ全般が保障され、入院・通院すれば入院日数・通院日数に応じて保険金が受け取れます。もちろん自転車に乗っている時に他人にケガをさせても保障されます。それでも保険料は月額300~500円(年間4000~6000円程度)で、この保険に特約を付けるのと同額に近いです。

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評判・苦情・口コミ

JA共済の2024年度の決算資料によると、生命共済が中心の長期共済の新契約高は11.1兆円、自動車共済が中心の短期共済の新契約高は3551億円でした。長期共済が前年度から2%減で減少傾向に歯止めがかからない状態ですが、短期共済は前年度比100.2%と一旦は減少が止まっています。

短期共済の中で自動車共済単体の数字を見ても、2024年度の新契約件数は808万件で前年度からほぼ横ばいです。そのため契約数から考えると評判は悪くない、少なくとも普通とはいえます。

JA共済の短期共済のうち自動車共済の新契約高(出典:JA共済ディスクロージャー誌「JA共済連の現状2025(令和6年度決算)」)

また、令和6年度にJA共済全体に寄せられた問い合わせ・相談等は10.2万件で、そのうち苦情数は8779件でした。組合員数の1021万件で割った苦情率は0.08%で、10000人の契約者のうち8人が苦情を出す程度です。1万に8つと考えると少ないのですが、2~3年前から苦情数が倍増しているのが気がかりです。

問い合わせで特に多いのは契約内容についてで、次いで共済金の請求手続き等の手続きに関する問い合わせでした。苦情では共済金の支払い関するものが多く、共済金を受け取るまでの手続きや経過報告、さらに共済金が受け取れるまでのスピードについて苦情がありそうです。契約の保全に関する苦情も多めのため、住所変更等の変更手続きや解約手続き等についても不満がある人が多いようです。

JA共済に寄せられた問い合わせ・苦情の内訳(出典:JA共済ディスクロージャー誌「JA共済連の現状2025(令和6年度決算)」)

これらのデータは共済側が発表した数字のため客観的なデータが欲しいところです。しかし、価格.comやオリコンの自動車保険 顧客満足度ランキング2025では、保険ではなく共済のためかJA共済は調査の対象外でした。唯一、経産省・サービス産業生産性協議会の「2025年度 JCSI日本版顧客満足度指数調査(第4回)」で、損害保険分野で調査対象となっています。この調査は10万人が調査対象となっているため信頼が置けます。

この調査では顧客期待・知覚品質・知覚価値・顧客満足・推奨意向・ロイヤリティが評価項目でランキングされています。JA共済は知覚品質・知覚価値・顧客満足・ロイヤリティで4位に入っていました。火災保険を除いて自動車保険に限っても、知覚価値・ロイヤリティは3位に入っており一定の満足度があるのが分かります。

JA共済の顧客満足度ランキングの順位(出典:2025年度JCSI日本版顧客満足度指数調査 第4回調査 詳細資料2025.10.28) JA共済の項目別の顧客満足度ランキングの順位とサブカテゴリーでの順位(出典:2025年度JCSI日本版顧客満足度指数調査 第4回調査 詳細資料2025.10.28)

以上のデータから考えると、JA共済の自動車共済の評判は普通そうです。契約数・申し込み数は横ばいですが、各種調査での顧客満足度は中間の順位だからです。あくまで上述の評判は自動車保険本体の話しですが、とりあえず自転車事故向けの特約を付けるにしては過度な心配は不要でしょう。

総合評価・おすすめか?

結論としては、JA共済の自動車共済に自転車向け特約を付けるのは、あまりオススメはできません。自転車事故に備えるには補償内容は物足りないからです。ただし、特約分の保険料も合計の保険料も安いため、保険料重視で最低限の自転車事故向けの補償が欲しい人なら検討の余地がありそうです。

他社の自動車保険を検討したい人は、保険料を重視するならチューリッヒのスーパー自動車保険、補償内容なら東京海上日動の自動車保険あたりが候補になります。また、自動車保険とは別に自転車保険に加入するなら、au損保のバイクルや三井住友海上のネットde保険@さいくるを検討すると良いでしょう。