あんしん介護 認知症保険を比較・評価

朝日生命 あんしん介護 認知症保険(認知症介護一時金保険・認知症介護終身年金保険)
オススメ度:
3
保険会社:
朝日生命
名称:
あんしん介護 認知症保険
加入年齢:
40~75歳
保障期間:
終身・定期
保障内容:
認知症で保険金
特徴:
経済的な負担の大きい認知症介護を支える

あんしん介護 認知症保険は朝日生命が2016年4月に募集・販売を開始した保険です。この保険の他に朝日生命には、要介護の前段階である要支援から保障される「あんしん介護 要支援保険」、要介護1から保障される「あんしん介護 プラスワン」等もあります。3つの保険のうち、この保険だけが認知症までカバーしています。

また、朝日生命にはインターネットで加入手続きができる朝日生命ネットほけんの中に、「人生100年時代認知症保険」がありますが、そちらとは保障内容が異なります。それでは以下で保障内容・保険料・評判等を解説し、他社の認知症保険と比較していきます。

保障内容

あんしん介護 認知症保険は認知症になると一時金が受け取れる認知症介護一時金保険と、認知症になると死亡するまで年金が受け取れる認知症介護終身年金保険に分かれています。一時金・年金の受け取るための条件は「認知症と診断され要介護1以上に認定される」と同一ですが、年金の場合は年金受け取りの2回目以降も条件を満たしている必要があります。例えば、年金2回目の時点で要介護1認定が取り消されていれば年金は受け取れません。

一時金タイプは認知症かつ要介護1認定で認知症介護一時金が受け取れ、その時点で契約・保障は消滅します。認知症にならずに死亡した場合、介護一時金の10%の額の死亡給付金が受け取れます。認知症介護一時金を受け取ると契約は消滅するため、認知症介護一時金を受け取れば死亡給付金は受け取れません。

あんしん介護 認知症保険の仕組み・保障内容(出典:朝日生命プレスリリース「新発売!認知症専用介護保険!」平成28年3月22日)

年金タイプは認知症かつ要介護1認定で、認知症介護年金が死亡するまで受け取れます。認知症になる前に死亡すると、1回分の年金と同額の死亡給付金が受け取れます。認知症介護年金の受け取っている最中に死亡した場合も、1回分の年金と同額の死亡給付金が受け取れます。

さらに2020年4月から軽度認知障害保障特約が付けられるようになりました。軽度認知障害(MCI)は認知症の前段階ともいえる状態です。この特約を付けて医師から軽度認知障害と診断確定されると、軽度認知障害給付金が受け取れます。軽度認知障害の診断前に認知症と診断された場合は、認知症一時金(または年金)と同時に軽度認知障害給付金が受け取れます。給付金額は5~30万円の範囲内で自分で設定できます。

あんしん介護 認知症保険と軽度認知障害保障特約の保障範囲(出典:朝日生命プレスリリース「軽度認知障害保障特約の発売」2020年3月9日)

また、この保険は要介護1以上の認定で以後の保険料の支払いが免除されます。例えば、認知症とは診断されていないが、他の病気(心筋梗塞など)を契機に体力が衰えて要介護1に認定されたケースが挙げられます。この特約も主契約と同時に要介護1認定の段階で保険料の支払いが免除されます。

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保険料を他社と比較

この保険の保険料は性別・年齢・一時金か年金か・保険金額・保険期間・保険料払込期間・特約の有無等で変動します。性別では基本的に女性より男性の方が保険料は安く、年齢が低いほど保険料は安くなります。一時金タイプと年金タイプでは一時金タイプの方が基本的に保険料は安いです。年金タイプで年60万円と一時金300万円では、保険料は倍に近い差があります。

あんしん介護 認知症保険の保険料一覧表(出典:朝日生命プレスリリース「新発売!認知症専用介護保険!」平成28年3月22日)

また、保険期間が終身より定期型の方が保険料は一段と安くなります。平均寿命に近い80歳になれば保障は不要だと考えれば、定期型で70・75・80歳で保障が消滅する定期型にするのも手です。保険期間が終身の場合は保険料払込期間が長いほど保険料は安くなり、認知症になるか死亡するまで保険料を支払う終身払いが最も安くなります。その一方で保険料払込期間を最短の5年にすると保険料は最も高くなります。

特約は軽度認知障害保障特約がありますが、特約を付ければ保険料は上昇します。特約の給付金は5~30万円の範囲で設定でき、給付金額が高くなるほど保険料も高くなります。また、主契約とは異なり女性よりも男性の方が保険料は高くなります。

次に保険料は他社より安いのか高いのか、下図で他社の認知症保険と一覧表で比較しました。各社によって公にされている情報が異なるため、80歳で認知症になった場合の返戻率で比較しました。また、年金形式ではなく一時金で受け取るパターンで比較しました。

認知症保険の50歳と60歳と70歳の保険料の比較一覧表(第一生命・朝日生命・太陽生命・SOMPOひまわり生命・住友生命・日本生命・ネオファースト生命・明治安田生命・ライフネット生命・楽天生命・アクサ生命・リボン少短)※各社の公式HPを元に当社が独自に作成

この保険の返戻率は他社と比較して高くトップクラスのため保険料は安いといえます。とはいえ他社には、あらかじめ軽度認知障害の保障が付いている保険があります。この保険で軽度認知障害保障特約を付けると、50歳で返戻率は282%まで低下してしまいます。それでも他社より高めとはいえ圧倒的に高い返戻率ではなくなります。続いて保険料以外にメリットがあるのか、メリットについて記述していきます。

メリット

この保険のメリットは、まずは年金タイプが選択できる点が挙げられます。この保険は年金タイプを選択すれば、死亡するまで年金が受け取り続けられます。生命保険文化センターの全国実態調査によると、平均介護期間は5年ですが、全体の17.6%(約6人に1人)は介護期間が10年を超えます。一時金だと介護期間が10年に及べば不足する可能性があります。他社の保険を見渡しても一時金タイプが多い中で、年金タイプが選べるのは記帳です。

保障面では軽度認知障害保障特約が付けられるのがメリットです。他社には軽度認知障害(MCI)に備えられない保険があり、主契約とセットになっているケースもあります。この保険では特約のため自分で付けるか選択でき、特約分の保険料も給付金額10万円なら数百円のため負担感がありません。

あんしん介護 認知症保険の保険料一覧表(出典:朝日生命プレスリリース「新発売!認知症専用介護保険!」平成28年3月22日)

さらに要介護1に認定されると保険料の支払いが免除されるのもメリットです。他社の保険では認知症になると契約・保障が消滅するタイプが多く、あったとしても三大疾病に罹患すると保険料が免除されるタイプが多いです。三大疾病と認知症は完全に無関係ではありませんが(脳卒中が原因で認知症になる等)、より介護への不安に近い形で保険料が免除されるため忘れにくいです。三大疾病になって介護保険の保険料が免除まで気が回らない人が多いでしょう。

また、保険契約者は認知症のための各種サービス(介護あんしんサポート)が利用できるのもメリットです。認知症の予防・早期発見のためのアプリの他、軽度認知障害のリスクを調べるスクリーニング検査の案内もしています。さらに緊急時にALSOKが家を訪問するサービス、保険金にための診断書取得代行サービス、家族信託の相談、認知症地域支援マップの案内もあります。

診断書取得代行のイメージ(出典:朝日生命プレスリリース「新発売!認知症専用介護保険!」平成28年3月22日)

デメリット・弱点・落とし穴

この保険のデメリットには、まずは公的介護保険の要介護1の認定が必要である点が挙げられます。他社では太陽生命や日本生命のように保険金を受け取れる条件が認知症の診断確定だけというケースがあります。要介護1の認定のためには役所での手続き・審査が必要なため、保険金を受け取れるのが認知症と診断されてから大幅に遅れる可能性があります。

保障面では死亡給付金に注意が必要です。死亡給付金は認知症介護年金を受け取り始めてから死亡すれば問題ありませんが、それ以外では保険期間が終身で保険料の払込完了後に死亡した場合のみ受け取れます。つまり保険料を70~80歳で支払い終えてから死亡すると受け取れます。保険料を支払い終える前に死亡すると死亡給付金は受け取れません。また、保険料を終身払い(認知症・死亡するまで支払う)にすると、死亡給付金は受け取れません。

さらに認知症にならずに死亡給付金を受け取った場合、前述の返戻率ではなく100%を下回り支払った保険料に対して損失が発生します。死亡給付金の額は年金タイプの場合は年金1回分、一時金タイプの場合は一時金の10%の額に留まります。前述の50歳契約・一時金タイプで80歳で認知症にならずに死亡すると、返戻率は40%程度となり支払った保険料の半分が戻ってくるだけです。

軽度認知障害保障特約が80歳で保障が終了する点も見逃せません。厚生労働省の調査によると70代後半で認知症の有病率は男性で11.7%、女性で14.4%です。80代後半になって男性が35%、女性が43%となることを考えると80代に入ってから軽度認知障害となる可能性は十二分に考えられます。いざという時には特約の保障が消滅して意味が無いというケースがありそうです。

年齢階級別の認知症の有病率(出典:東京都健康長寿医療センター研究所公式HP及び厚生労働科学研究費補助金認知症対策総合研究事業報告書2013)

サービス面でも認知症診断アプリや認知症の無料相談等は他社の保険でもあるため珍しくありません。ALSOKのみまもりサポートについても第一生命に類似のサービスがあります。それも朝日生命で契約者特典で月額利用料が2ヶ月無料になるだけという点に注意が必要です。

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評判・苦情

朝日生命の2024年の決算資料によると、個人向け保険の新契約数は63.5万件で前年度の66.8万件から約5%の減少でした。その中で、あんしん介護シリーズは2023年11月に累計販売件数が100万件を突破するなど販売数は堅調です。そのため申込数・契約数等からすると評判は悪くありません。

認知症保険の販売開始から4ヵ月時点での販売件数(出典:朝日生命プレスリリース「あんしん介護シリーズの累計販売件数が100万件を突破しました!」2023年11月2日)

また、生命保険協会の苦情数のデータでは、朝日生命全体に寄せられた苦情数は7023件(2024年度上半期実績)でした。総顧客数の742万件で割った苦情率は0.29%で、契約者1000人のうち2.9件の苦情が発生している計算です。他社の苦情率は0.1~0.3%台が多いため、苦情面で考えると評判は普通です。

それに対して、調査会社のJ.D.パワーの「2024年 生命保険契約満足度調査(保険会社営業職員部門)」では、朝日生命は13社中13位と最下位でした。この調査は手続き・顧客対応・商品提供・保険料が評価項目ですが、どの項目でも満足度は極めて低いと考えられます。1つ上の順位の富国生命との差が大きいのも気がかりです。

JDパワー 2025年生命保険契約満足度調査 保険会社営業職員部門(出典:JDパワー公式HP)

「オリコン顧客満足度 生命保険ランキング2025」でも朝日生命は27社中27位と最下位でした。この調査の評価項目は加入手続き・商品内容・保険料・アフターフォローですが、どの項目別のランキングでも10位以下でした。JDパワーの調査と整合性が取れるため信憑性が高まります。

個別の口コミではポジティブな意見がある一方で、「更新できるはずが不可能だった」「保険料が高くなる」「アフターフォローが無い」「独身者に配慮された提案ではなかった」等の意見がありました。さすがに満足度が低いだけあって満遍なく不満が見受けられます。

その一方で、この保険は同じオリコンの「2025年 FPが選んだ オリコン認知症保険ランキング」では1位で、2位とも4点以上の差がありダントツのトップでした。評価項目である保険料・保障の独自性・商品内容のいずれの項目でも1位を取っていました。2021年のランキングから1位をキープしており、この保険への専門家の評価が非常に高いことが伺えます。

認知症保険ランキング(出典:オリコン公式HP「2025年 FPが選んだ オリコン認知症保険ランキング」)

以上のデータから考えると朝日生命の評判は悪そうですが、あんしん介護認知症保険の評判は良さそうです。朝日生命の評判については苦情率は平均の範囲内とはいえ、各種調査で最下位の評価のため評判は悪いでしょう。この保険自体の評判については、契約数が好調で専門家からの評価も高いため評判は良いでしょう。加入者からの人気も高く専門家も高く評価しているため磐石といえます。

総合評価・おすすめか?

結論としては、あんしん介護認知症保険は悪くない保険です。デメリットもあるにはありますが、それ以上にメリットが大きく総合的に見れば十分に検討に値する保険です。その点については評判面でも明らかで、色々と他社と比べて迷ったなら選べば良い保険ともいえます。

それでも他社の保険も検討したい人は、総合的な良さでいえばネオファースト生命あたりの認知症保険を検討すべきでしょう。介護状態・医療保障等も併せて検討したいならフコク生命・アクサ生命あたりの認知症保険も候補になります。